98%は死ぬ? でも、まだ生きてます…末期食道がんの宣告を受けたのに、1年を経てなお日常生活を送る奇跡 | ビジネス | 東洋経済オンライン

統計では「終わり」のはずなのに…医療現場が教える経営判断の盲点

食道がんステージ4b、平均生存期間13.7カ月、9月までの死亡確率98%——この医学的数値では「終わり」のはずの患者が、1年を経てなお日常生活を送っている。医療現場の統計データと個人の現実のズレから、組織が陥りやすい「データへの過信」と「個人差軽視」の罠が見える。経営者が個人の例外ケースにどう向き合うかは、組織の適応力を左右する。

統計が示す「普通」と現実のズレ

昨年4月、食道がんステージ4b(末期がん)の診断を受けた患者がいる。がんは遠隔転移で既に4カ所に及び、手術も放射線治療も適応外だった。絶望的な状況だったはずだ。しかし、1年が経過した今も日常生活を送っている。

医学的には異常だ。日本食道学会の診療ガイドラインによれば、同じステージで現在の治療(免疫チェックポイント阻害剤2剤治療)を受けても、平均生存期間は13.7カ月。つまり今年5月での死亡が「平均的な結果」であり、今年9月までに亡くなる確率は98%に上る。全国の医師がこのデータを参照し、治療の基本方針を立てている。

なぜデータが「正確」でも「完全」ではないのか

統計データの信頼性は高い。これは臨床試験に基づく客観的数値であり、医療現場の判断基準として機能している。しかし同時に、統計とは必ず「例外」を内包する。98%の患者がある結果に至る一方で、2%は異なる結果をたどる——その2%に属する患者が存在するのは、統計学的に正常だ。

経営組織でも同じ原理が働く。過去データに基づいて予測し、方針を立てることは理にかなっている。だが全員が「平均」に従うわけではない。組織のリーダーが見落としやすいのは、この「例外への対応」だ。統計的合理性と個人差は、本来両立すべき概念である。

経営者が取るべき3つのアクション

  • データに基づく意思決定と同時に、「個人差・例外の存在」を前提に余裕を持たせた戦略を設計する。平均値は目安であり、全ての個体がそれに従わないことを組織全体で認識する
  • 統計的に「終わり」と判定されたプロジェクトやメンバーに対しても、例外的対応の余地を残す。早期に切り捨てるのではなく、選択肢の多様性を保つ
  • 医療現場の「診療ガイドライン」のように、組織内の判断基準は定期的に検証する。データが古くなっていないか、新しい事例が統計の前提を変えていないか確認する習慣をつける

ビジネスにおいても医療においても、データは判断の羅針盤だ。だが羅針盤が指す先の景色は、個人差によって異なる。経営の面白さの一つは、この「予測不可能性の中での選択」にある。統計を尊重しながらも、例外に賭ける勇気が、時に組織を救う。

出典:東洋経済「98%は死ぬ? でも、まだ生きてます…末期食道がんの宣告を受けたのに、1年を経てなお日常生活を送る奇跡」

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